「悪」を悪といえない企業体質 ― 2017年10月13日 08時57分54秒
多少旧聞の属するが、大企業の東芝が新旧の社長同士の争いから、大規模な不正会計に走り、会社を根底から揺るがす不祥事になった。また最近では日産が完成品の検査を資格のない検査員に任して、ハンコだけ正規のものが使われていたという事件があったかと思うと、神戸製鋼で大規模な検査の不正が発覚し、対応に追われている。
これらの共通して言えることは「これまずいよね」と思っていても、それを言い出せない、正せない会社の雰囲気があることである。本来、職位の高い人ほどこれらの「悪」を正せる立場にあると思うのであるが、自分たちもこの不正を見逃すことで、つまり上司の不正を指摘しないことで出世してきた経緯もあり、全社的に「悪」を指摘できる体質になかったと思われる。
これらの不正がどのような経緯で発覚したのかは分からないが、多分社内で声を上げても受け付けられなかったために、外部へのリークがあったのではと推測する。
このような体質は日本の企業だけとは限らない。先にVWが環境試験をごまかしていたこともあり、穿り出せば各国各社に及ぶのかも知れない。
要は、社内で自浄作用が働く余地があるかどうかにかかっているように思う。自浄作用のない会社は今後衰退していくように思う。
従業員を大切にする会社 ― 2017年05月15日 09時29分15秒
以前にもここに書いたように思うが、我々が働いていたころの会社は「人こそ会社の宝であり、成長の原動力である」という考えが主流で、会社としての利益よりも従業員の給料を優先していたように思う。従って、従業員の方も「会社のためには命を懸ける」ような意気込みがあり、会社発展の大きな原動力になっていたと思う。
所が昨今の状況を見ると、もちろん会社によって好不調の波はあるものの、一様に従業員の賃金は低めに抑えられ、出来るだけ非正規従業員で必要な工数を埋めようとする傾向が強い。非正規従業員は必然的に低賃金に抑えられている。
一方で会社の利益は大幅に伸びており、余剰資金として積み立てられている額は300兆円を超えているという。会社には国家予算の3倍を超える金額が溢れていることになる。会社幹部はリーマンショックのような危機に備えるのだと言っているが、当面使うあてのない金を溢れさしておいて、従業員への生活向上に回って行かないのはどうしてだろうか。
従業員の側も会社に対する忠誠心といった気持ちが薄れているように思うのは自分だけだろうか。結果としてある会社などは外国企業に引き取られ、また粉飾決算を契機に屋台骨が揺らいでいる会社もあるし、一見平静を保っているようなところも、内部的には八方ふさがりになってきているやに伺える。その中で、従業員の誰かが立ち上がった言うような話はとんと聞こえてこない。
会社幹部は従業員を機会の一部だと勘違いしているのか、従業員の方が「指示待ち族」として積極的に何かを動かそうとしていないのか。
今や、殊に大会社は大変無気力な役所集団に成り下がっているように感じられる。
米国国民はトランプを大統領に選んだ ― 2016年11月11日 10時26分40秒
全くの予想に反して、アメリカ国民は次期大統領にトランプ氏を選んだ。彼の選挙中の過激な発言とは別に、就任してしまえば現実的な政策に転換することが予想されるので、選挙中の言動に左右されるべきではないが、彼を選んだ国民の民意は極めて大事であり、尊重されるべきであると思う。
つまり、金融資本主義が蔓延したことで、国民に大きな格差が生まれ、1%の富裕層が富の半分以上を占めているといわれており、貧困層に押し下げられた嘗ての中間層が反乱を起こしたものと考えられる。
かつての製造業中心の産業構造から、世界の後進国の台頭の中で労働者の賃金格差を生み、凋落していく中で、中間層が失われていったものと考えられる。その間に膨大な世界の金融市場を動かしていく事業が台頭し、一握りの資本家に富が集中している事態になっている分けである。
このことはオバマが大統領になった時にも提起されたが、思うような手を打てず、事態はますます悪化している状況にある。そのような流れの中でトランプが製造業を国内に移せるような施策を取ったとしても、コストが上がり、競争できるような状況にはできないと思う。
トランプに投票した多くの貧困層が、期待したような成果が得られないと、アメリカ経済ばかりか、世界経済に重大な混乱を招くことに危惧するものである。
英国のEU離脱の可否を問う国民投票 ― 2016年07月04日 08時46分01秒
英国のキャメロン首相は国内のEU離脱の風潮を
牽制し、残留を不動のものにするために、国民投票を呼びかけ、実施された。
その結果はキャメロン首相が描いた道筋から外れて、52:48の僅差で離脱派が勝ってしまったのは全く皮肉な結果であった。
その結果、英国を中心としてグローバルに特に経済的な混乱が懸念されており、現に我が国では円が急速に上がり、株価が下落している。
英国のEU離脱へのプロセスは9月以降新しい首相を選んで進められるというが、最大の問題は「離脱」に伴う諸般の政策が全く見通せていないことである。何の手立てもなく離脱に移行した英国民の混乱ぶりを見るにつけ、国民投票という直接選挙の恐ろしさを感じた次第である。
税金回避と富裕層の動き ― 2016年06月13日 09時57分25秒
いささか旧聞に属するが、パナマの事務所から漏れ出た情報で、世界中の企業や金持ちが、税金の安い国や都市に登録することにより、納税を回避していることが分かった。その額たるや21兆ドルというから、世界中の国家予算に匹敵するのではと思われる。
この回避措置自体は合法だという。つまり、税制自体は各国なり州なりの境界線の中で決められているのに対し、経済活動は国境を越えてグローバルに展開するため、個人や企業は自由に活動拠点を選べるからである。そうでなくても、富裕層と貧困層の格差が拡大しているときに、ますますその格差を広げる結果となっている。
元々、税金というのは富の再配分であり、富裕層から徴収した税金で貧困層の福祉を補っているところがあるのに、富裕層が納税を回避することでその機能が失われてしまう危険がある。それどころか、米国などの富裕層では自分たちの税金が貧困層に使われることを忌避する動きがあり、国としての(地方自治体としての)存立が危ぶまれる状況になってきている。
何でそんなに金を貯めたいのか。
東芝の粉飾決算 ― 2015年07月21日 21時08分53秒
東芝で過去5年間に千数百億円の粉飾決算が明るみに出たことで、西田、佐々木、と現職の田中社長が辞職することとなった。原因は各部門での利益競争が過熱し、決算段階で会計の処理だけで、見かけ上の利益を出すことで辻褄を合わせようとしたと言う。
自分が一番不思議に思うことは、これほど会計上の大きな不正が永年にわたって、行われていながら、誰も「そのやり方は間違っています。止めましょう。」というひとがいなかったことである。従業員だからその企業に忠誠を尽くすことはひつようではあっても、その前に人間として倫理的に反した行いに対しては、これを指摘し、修正していかなければならないと思う。
この事件が発覚したのは「内部告発」だったと聞いているので、多分下の方(?)の人には「これはおかしい。けしからん。」と思う人がいたと思うが、問題は経営トップに異議を唱える人がいなかったのが残念である。
これはある意味当然な結果であるかも知れない。つまり、大会社では概ね「減点主義だから、入社以来大した落ち度もなく、上司に従ってきた人しか、上には上がれないわけだから、トップの周りには「YES MAN」ばかりが集まっているわけだから、意義が出るような状況ではなかったと推察する。
今回は会計上の不正操作が問題ではあるが、俄かにトップをすげ替えたからと言って、修正できるとは思えない。つまり、減点主義で、上役の顔色を見ながら仕事をしていくような風潮の中では同じような事故は避けられないし、斬新な政策も進められないと思う。
特許権は会社のもの ― 2014年09月08日 09時09分30秒
過去に企業が人材を粗末にしていると言うお話を書いてきたが、この特許権の帰属をめぐる論争もその一環と考えている。つまり現在は企業内で発明したものであっても、その特許の所属は発明者個人にあり、企業との契約によって、その使用権は優先的のその企業が保持できるとものであるのに対し、企業側の要望で、特許権は最初から企業に属すると言う法改正を進めようとしている。
しかしながら、元々有効な特許になるような発明と言うものは業務の延長と言うよりも、個人の研鑚と努力によるところが大きいと思っている。いくら給料を払っているからと言いて、個人の努力まで企業の所有にすると言うのは理不尽すぎるように思う。
又もし、そのような制度が実施されるようなことになると、個人的に汗水掻いて発明に関わる努力をしようと言う人は極めて少なくなっていくのではと思われる。殊に、そうでなくても新しい開発が難しくなっている大企業にとっては、更に出難くなってしていくことになり、自ら自分の首を絞めていることになる。
つまりは個人の生きがいを摘み、人間性を無視し、人材を軽視した経営方針の表れであるようの思う。
昨今の労働環境 ― 2014年08月11日 14時25分51秒
今更と言う気がするが、我々が働いていた当時の企業の環境と、昨今は様変わりしてきているようである。当時は少なくとも、企業を支えているのは基本的に「人」であり、「人」の能力とそれに基づく企業への貢献が原動力になっていた。従って、ある意味企業の業績よりも「従業員」に対する扱いが優先されており、大事にされて来ていたように思う。
昨今では、労働は一種機械の一部であり、その人数は生産調整の道具であり、賃金は生産コストカットの手段になってきている。そこには労働者を心の通った「人」として扱わず、使い捨ての歯車としてしか考えられていない。一労働者だけではなく、その家族の生身の生活があることを経営者は考えていなのだろうか。
経営的には会社の利益を優先して、株価を吊り上げ、株主に報いるような方向で進められており、そのしわ寄せが従業員にきている。経営側からは見えにくい株主であり、金を動かしているだけ利益を得ようとしている株主に尽くすよりも、目の前い働いており、日々の生産活動に汗を流してくれている労働者に報いる方が、どれだけ会社にとって有意義であり、社会に対する大きな貢献になっていると思う。
アメリカ渡来の金融資本主義が、企業風土を壊し、従業員を酷使する結果、極端な貧富の格差を生んでいるばかりでなく、生き甲斐の見いだせない環境になってしまっていることを憂うるものである。
原発を輸出すると言う ― 2014年04月05日 09時50分18秒
原発の再稼働が問題かと思ったら、そんなことはとっくに通り抜けて、原発を輸出する法律を国会で承認したとのこと。輸出した国で今回の福島で起きたような事故が起こったら、どうするのだろうか。
ここでも「安全神話」が通用すると思っているのだろうか。確かに日本で最初に原発が設置されたのは福島第一原発の一号機でこれなアメリカのGEから輸入したものである。しかし、だからと言ってこの事故の責任をアメリカにおんぶさせようと言うのは虫が良すぎるが、それにしても日本はアメリカに対して、物をいわな過ぎるのではないだろうか。
自分の国でコントロールできていないような代物を他国に輸出すると言うのは今回のような災害も含めて輸出するようなものだ。原発の製造会社にとっては、国内で原発の増設が当分見込めない状況の中で、輸出できると言うのは有難いことかも知れないが、事故を起こす危険も同時にしょっていることを自覚すべきである。
会社が変わっていく ― 2014年03月18日 20時39分10秒
最近の会社を見ていると、いつの間にか自分たちが過ごしてきた時代の会社と随分変わってきているように思う。正規社員が減ってきて、非正規社員が増えてきていると言った傾向もさることながら、正規社員と言えども会社から大事にされていると言う印象ではなく、いつでも依願退職させられる弱い立場に追い込まれているように思う。
我々が育った数十年前の会社は人材こそ会社の宝であり、会社発展の原動力であって、どんなことがあっても何より人を大事にする経営であったように思う。そう言えば、当時の会社に利益は諸外国の会社のそれと比べて、恥ずかしいほど少なかったが、会社の利益などと言うものは「赤字でなければいいんだ。」と言うような風潮で、儲けの大部分は社員への報酬に充てられていたように思う。
それがいつのころからか、(おそらくアメリカの金融資本主義に毒されてきて)株主への利益の還元が重要視され、会社も利益を求めて、株主への配当を重視し、結果として株価を吊り上げ総資産の増加に寄与させようと変わってきている。
利益を優先するあまり、人件費は出来るだけ少なくしようと作為した結果、非正規社員の増加を招き、昇給を出来るだけ抑えながら、寧ろ内部留保に励んでいるようで、一体企業活動における人材のあり方があまりにも軽視されているように思う。
このような状況を見て、自分たちが一番心配になる点は従業員の企業業績に対する貢献度をどのように評価しているかという点である。経営者の言うことを、黙って実行しろとでもいうのだろうか。そのような欧米流の人材活用からは「指示待ち族」がはびこって、社員の能力を生かすことにはならないと思う。
その結果として、一部の裕福な人々と、大部分の貧しい階級に分離するとともに、人材を生かす日本独自の方式を捨ててしまっているのはほんとに悲しいことである。
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